お知らせ

【トップ対談-Chapter3】三井住友信託銀行・大山社長と平岡理事長

前回対談記事「Chapter 2」に続き、「Chapter 3」を掲載いたします。本章では「スポーツが持つ力」を大山社長、平岡理事長がご自身の経験をもって語っています。


スポーツが持つ

アスリート×スポーツが持つパワー、誰もが輝くために

平岡理事長 私が、スペシャルオリンピックスに「どはまり」というか、本当に集中して関わりたいと思うようになったのは、オリンピック後ですね。メダリストとして現役を引退する直前は、なかなか自分自身に自信が持てませんでした。北京、ロンドンオリンピックに出場し、ロンドンオリンピックで銀メダルを取りました。北京オリンピックは、オリンピックを3連覇された野村忠宏さんと争って日本代表として迎えた大会だったにも関わらず初戦敗退してしまった。その後、世間からものすごく批判を浴びて、それが辛くて世間から認められたいという思いで、金メダルを取るしかないと4年間頑張ったにも関わらず、銀メダルで終わってしまった。そういう自分に自信が持てなかったのです。

皆誇りを持っている

そんな中、スペシャルオリンピックスの海外の柔道アスリートたちと講道館でたまたま出会ったのです。彼らが楽しみながら一生懸命柔道に取り組み、最後はきちんと礼をする様子を見て、自分に誇りを持っているのだと強く感じました。それは自分になかったことで、結果を出せば世間から認められる、と信じてやってきた自分は何だったんだろう?と、自分の過去を振り返り、その時の自分も含めて好きになることができたのも、スペシャルオリンピックスに出会えたからだったのです。

2024年冬季ナショナルゲームにて

世の中を気にしながら結果を出して頑張りたいとか、それをモチベーションとして頑張られている方は大勢いらっしゃると思います。スペシャルオリンピックスのアスリートたちが持つパワーは、オリンピックのメダリストの気持ちすら変えてしまうことに気づき、アスリートのパワーをもっと届けることはできないか?という思いから、スペシャルオリンピックスに関わるようになりました。

ドリームサポーターという立場で、スペシャルオリンピックス日本の競技会や柔道やマラソンなどのイベントへの参加を通じて、アスリートたちの魅力にどんどん惹かれ、元気をもらいました。

現役中は、「柔道は人間教育だ。相手に礼を尽くす競技なのだ」と理解しながらも、結果を出したい、と相手の負けを願っている自分がいて、葛藤がありました。そんな自分に対し、「その時はいっぱいいっぱいだったよね」と肯定し、頭の中を整理させてもらったのがこの活動でした。スペシャルオリンピックスの活動に参加するのがとても楽しく、一緒に何かできないかな、と思いながらここまで走り続け、気がつけば理事長になっていました。心が洗われると言いますか、この活動を通じて、自分の過去の経験を整理し、言語化することができるようになったと感じています。
大山社長も学生時代にバスケットボールに打ち込まれていたと聞いていますが、そのご経験から培われた信念などはありますか?

パーパスの共有

大山社長 私は中学時代にバスケットボール部に所属し、中1の時に全国2位、中2の時に全国3位、中3の時にも全国3位になりましたが、実は一人一人の能力は決して高くもなく、チームも特別良い訳でもなかった。ただ、入部できるのが先着10名で熱意のある人が入って来ることと、上の2代が全国大会に出たため、「自分たちも全国大会に行きたい」という思いはとても強かったのです。個人の能力は高くなくても、目的意識を共有することで大きな力を発揮できると感じました。「チームで勝つ」という私の信条はそこから生まれました。

スラムダンクでも、桜木花道と流川楓は、仲は悪いが「試合に勝つ」という目的意識を共有化することですごい力が出てチーム力が高まると思っており、この「チームで勝つ」ことが、先ほど申し上げた 「for all」につながると思うのです。 また、「for all」を実現するためには「目的意識の共有」が必要で、当社で言うとそれが「パーパス」です。パーパスを共有するすることでチームの力を引き出し、互いに高いレベルの能力やパフォーマンスを要求し合う緊張感や信頼感を持つことで、当社がバリューに掲げる「信頼創造」の組織能力を目指しています。

多様性あふれる人材が互いの個性を尊重し、個々人の能力を最大限発揮できる環境で、アイデアを出し合い、協力し、周囲をインスパイアし、イノベーションを起こし続ける。結果として、一人一人のWell-beingが向上する、そのような組織、会社を作っていきたいと思っています。

平岡理事長 私もスラムダンクを見ていました。最後の山王戦で逆転した時に桜木と流川がハイタッチをする場面は、今見ても鳥肌が立つというか、あの 2人がこれをやるか、という場面ですよね。

大山社長 私も、社長になってからスラムダンクの映画を見に行きました。社員に見つからないように(笑)。まず音楽がしびれますね。また、リアルにバスケットボールをやっていた者からすると、体育館でバスケットシューズが床とこすれてキュッキュと鳴る音とか動悸とかも、とてもリアルで。


平岡理事長 ユニファイドの話がありましたが、例えば知的障害のある人とない人が一緒にペアを組むときに、勝ちたいけれどこの人は少し能力が高くないかもしれないという場合に、周りは勝たせるために盛り上げる準備をしなければいけなくなると思うのですよね。その時に、この人が持っている能力を発揮できたら周りも盛り上がっていくよね、パフォーマンスも上がっていくよね、という考えがユニファイドスポーツに近いと思っています。私は、元々は自分自身が一番大好きだったので個人競技を選びましたが(笑)、今は、私が本当に輝ける環境というものを整えてくれる誰かがいて、自分を奮い立たせてくれる誰かがいて、周りの色々なところにユニファイドがあったのかな、と、改めてこの活動を通して自分の過去を振り返ることができています。

大山社長 平岡理事長が、SON動画で「スペシャルオリンピックスのアスリートが競技をしているときの表情を見ていると、誇りをもってプレイしていて、一所懸命笑うし悔しがるし、自分に勝った相手をたたえる」と仰っていましたが、一人の人間としての尊厳を持って、精一杯戦う姿に人々は魅了される。それがスポーツの醍醐味だと思います。 グループ会社の日興アセットマネジメントでは、2014年に「アスリート社員制度」を導入しています。障がいのあるアスリートを正社員として採用し、現役時の競技活動支援と柔軟な働き方、および競技以外のキャリア構築を目指すもので、うち2名は今夏のパリパラリンピックの車いすラグビーで、日本代表として参加予定(※)です。ぜひご期待下さい。
(※) 車いすラグビー日本代表は金メダルをとりました。

平岡理事長 とりわけ、障害のある人に対して周りの人たちが、アンコンシャスバイアスと言いますか、無意識に「この人はこのぐらいしかできないだろう」という思い込みを持って、障害のある人たちが本来持っている能力を発揮することを妨げていることは、割と多いのではないかと思っています。障害のある人たちの環境を整えることで、各々が持っている力を最大限発揮できるのですから、そういう社会を目指していかないといけないと思っているのですが、今のお話を伺って、まさしくその通りだと感じました。

大山社長 女性活躍推進などもそうですよね。能力があるのに自信がなくて、新しい仕事やポジションに取り組めないという人に対し、能力を発揮して活躍できるよう環境を整えるという考え方は共通しています。

毎回本気で臨むディビジョニング

平岡理事長 先ほど、スペシャルオリンピックスの特徴である「ディビジョニング」と「全員表彰」の話をしましたが、全員表彰と聞くと「みんなが表彰されるってどうなんだ」と思われる方が少なからずいると思います。けれども、この競い合う「ディビジョニング」というシステムがとてもしっかりていて、競技能力が同程度の人と競うシステムなのです。レベルの差が激しい相手と戦う時は、「このぐらいで手加減しておこう」とか「次の試合に向けてこのぐらいで調整しておこう」といった戦術を考えがちですが、力が同程度同士だとそれが一切通用しないのです。毎回毎回本気で試合に臨まないといけない、毎回全力を出さないと次に進めないのだ、という思いで挑戦するのが、実はスペシャルオリンピックスのディビジョニングの特徴です。甘えとかではなく、全力を出し切った人たちだからこそ全員が表彰される、ということを、三井住友信託銀行の皆さまに感じて頂けたらと思います。

大山社長 トーナメントなどで強いチームと弱いチームがあると「絶対こっちが勝つ」と考えたり、最後には金・銀・銅の3つだけが表彰されたりと、そういうことが大事ではないということですね。

平岡理事長 大会では、ディビジョニングとしてまず初日にアスリートの競技能力を見るクラス分け(予選)を行います。翌日また次の日に同じように能力が同等の人同士でチーム分けを行い、また競い合います。一人一人の技能がどのぐらいかというクラス分けが行われてチームを振り分け、そこで競り合ってそれぞれ優勝を狙いにいきます。ですから、能力が同等だから結構厳しい中で競っているのだなというのがよく分かります。

スポーツと健康。誰もが輝けるとは

平岡理事長 HAPもスペシャルオリンピックス独自の取り組みで、自慢したいぐらいです。2019年スペシャルオリンピックス夏季世界大会・アブダビの時に、前理事長の有森裕子さんに「HAPを見ておいで」と言われて見ました。試合会場一つ分のスペースを使って、眼や耳、食べるもの、歯の磨き方、足や体の動かし方、靴の選び方、スキンケアなど、テーマ別にブースを設け、アスリートたちに「これを使った方がいいよ」「食べるものはどれがいいか」「これだと糖分が多いね」というように、普段気をつけるべき情報をアドバイスします。例えば知的障害のある人たちは、自分の体の不調をうまく伝えられない場合があるので、もしかしたら他の障害があるかもしれない、例えば眼や耳に別の障害があるかもしれない、といったことをHAPで見つけているのです。そこで他の不調も見つかりました、というアスリートが多いですね。「その人の健康のことを」という思いがあってのHAPですね。


次回、最終章「Chapeter 4」をお楽しみに!

写真提供:三井住友信託銀行、スペシャルオリンピックス日本

本件に関するお問い合わせ


お問い合わせは下記よりご連絡ください。

スペシャルオリンピックス日本 事務局