HAP/ハップ

スペシャルオリンピックス日本(SON)では、健康推進事業の一環としてヘルシー・アスリート・プログラム(HAP/ハップ)に取り組んでいます。HAPとは、アスリートの健康を増進し、競技会などで実力を最大限に発揮できるよう健診を行い、アスリート本人やコーチ、ファミリーに結果を伝えて、健康に対する意識や知識の啓発を行い、生活の質の向上を目指すプログラムです。

ヘルシー・アスリート・プログラム(HAP/ハップ)

HAPには6部門があり、各領域に対応しています。知的障害者の特性を理解した言語聴覚士、理学療法士、検眼士、栄養士、医師、歯科医師などが、ボランティアとして参加し、小学生から成人までのアスリートの健診や教育に従事しています。
健診プログラムは以下のとおりです。

1. 身体の柔軟性やバランス(ファンフィットネス)

ファンフィットネスの目的は、柔軟性、筋力、バランス、および有酸素運動能力を評価し、向上させることです。
理学療法士により、それぞれの身体能力の重要性と、ストレッチング、筋力増強、バランス向上、有酸素運動能力向上のための運動について指導が行われます。
 ①大腿後面の筋肉、ふくらはぎの筋肉、肩関節の回旋および股関節屈筋の柔軟性
 ②腹筋及び下肢筋の機能的な筋力
 ③片足立ちとファンクショナルリーチによるバランス
 ④6分間歩行などによる有酸素運動能力の評価

2. 視力(オープニングアイズ)

人間が外界の情報を収集する際に必用とする五感の中での視覚への依存度は85%以上といわれています。
スペシャルオリンピックス・ライオンズクラブ・インターナショナル・オープニングアイズ」(略称:オープニングアイズ)では、視力・眼の機能・器質的診断を含め、アスリートたちの眼の健康を守るために、世界大会や国内大会では参加アスリートに対し、眼科医師や視機能の専門家を中心に眼の健康チェックを実施し、 ライオンズクラブ・インターナショナルをはじめ、数多くの眼鏡関係企業の支援の下、検診時に矯正が必要と診断されたアスリートに眼鏡やスポーツゴーグルなどを無償で提供しています。
我々の活動はスペシャルオリンピクスの日常に密着し、より多くのアスリートたちが”見ることの喜び”を感じてもらえるように活動の幅を広げて行きたいと考えています。

3. 口腔(スペシャルスマイルズ)

「色々な食べ物を良く咬んで美味しく食べられる」と言う事は、全身の健康に多大な影響を与え、また、生きる喜びの一つでもあります。しかし、口腔機能が正しく働かなければ「美味しく食べる」ことは出来ません。「口腔機能を正しく働かせる」ためには、口腔疾患の予防と早期発見、早期治療を欠かすことは出来ません。
このような観点から、スペシャルスマイルズでは、口腔(歯、歯肉)の健康チェックと口腔疾患の予防のための歯ブラシの指導と栄養指導を行います。健診において、もし問題があり必要ならば、早期に治療が受けられるように、アスリートごとに近隣の歯科医を紹介いたします。

4. 聴力(ヘルシーヒアリング)

ヘルシーヒアリングでは、鼓膜の状態、聴力検査などにより、聴力障害とその原因などについて、言語聴覚士、耳鼻科医が最新の機器と知的発達障害者に配慮した測定方法で検査します。
第1検査では、“鼓膜が耳垢でふさがっていないか“、“鼓膜が炎症を起こしていないか”、“耳の内部が清潔に保たれているか”などを調べます。第2検査では、自動的に聴力検査ができる機器を使用するので知的発達障害をもつ方でも手軽に測定する事ができます。この検査で問題がなければ、すべての検査が終了します。もし問題が指摘されれば、第3検査で“鼓膜の動き“を測定し、中耳に炎症の可能性がないかなどをチェックします。第4検査では、さらに正確に測定できる機器を使って聴力検査を行います。
ただし、防音設備などが充分ではない状況で行われますので、もし問題が指摘された場合は、地域の医療機関で精密検査を受ける事をお勧めしています。

5. 足のケア(フィットフィート)

フィットフィートは、アスリートの足(足関節と足部)の状態を健診する部門で、爪や皮膚、歩行、靴や靴下の状態および関節の形態を評価します。
足の不調は、足以外にも身体に疼痛などを引き起こす可能性が考えられ、スポーツ場面のみでなく、日常生活にも悪影響を与えることが考えられます。そのためには、日頃から足を良い状態に保つことが必要であり、正しいケアを行うことが大切です。
健診の担当は米国足病医、整形外科医、理学療法士が行います。
健診の結果から、アスリート個人に適した爪や皮膚の手入れ方法や靴の選び方についてアドバイス致します。また、足の変形はスポーツ障害・外傷を引き起こす可能性が高いため、それらを予防するために、正しい歩行やランニングをするための対策方法についてもアドバイス致します。

6. 栄養・生活習慣(ヘルスプロモーション)

ヘルスプロモーションは、アスリートの運動能力向上、健康維持増進を目標としたプログラムです。
偏食、過食などによる過体重はアスリートにとっても運動能力、健康上の支障をきたすだけでなく、糖尿病や心臓疾患のおそれや、骨密度の低下も指摘されています。身長、体重測定に加えて普段は測定機会の少ない骨密度測定を行い、アスリートの状態を把握します。加えて、アスリートとそのサポーターに栄養士・保健師等がアスリートの食生活や喫煙などの生活習慣および状態をお聴きし、どのような生活が運動能力向上、健康維持増進につながるか一緒に考えていきます。
現在は食生活、水分補給、日焼け防止、エクササイズ等、広範囲に亘る教育プログラムがありますが、アスリートの生活環境や生活習慣が変わればQOL(人生の質)は格段にアップします。
自由に伸び伸びと人生を楽しむことがヘルスプロモーションの究極の目的です。アスリートの周りや地域と共に真のヘルスプロモーション活動の場を広げていきたいと思っています。

担当者の声

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ヘルシーヒアリング クリニカルディレクター:伊藤英夫 氏

HAPは、2004年の冬季長野全国大会で初めて6部門そろって実施されました。我が国では、医師による学校健診の制度は充実していますが、アスリートの半数以上を占める青年・成人期の人達には、残念ながら健康増進プログラムは保障されていません。
ところがアスリートの中には、健康管理を自分で実行したり、身体の変調を訴えたりする事が苦手な場合が多く、競技はおろか健康な生活を送る事すら困難になる場合もあります。

そのため各専門家たちが現在のアスリートの健康状態を細かく評価し、今後のよりよい生活のための助言をしてくれるのが「ヘルシー・アスリート・プログラム(HAP)」です。
靴に補正のための中敷きを入れる事で走るのが速くなったアスリートや、度のあった眼鏡を提供してもらい、団体競技がスムースにできるようになったアスリートも多くいます。このようにHAPに参加する事で、アスリートが健康増進への意識を高め、スポーツをより楽しむ事ができるように願っています。今後は、HAPを実施できる医療スタッフやボランティアを養成し、全国で実施できる体制を作っていきたいと考えています。そのためには、是非皆さんのご協力をお願いします。

プログラムに関するお問い合わせ


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