第7回エールラン開催

9月30日、東京・お台場の秋空にランナーの歓声が響き渡った。第7回を迎えたエールラン。参加費が知的障害のある人たちにスポーツトレーニングと競技会を提供するSON(スペシャルオリンピックス日本)への活動資金となるチャリティ・ランの舞台は昨年に続き、パレットタウン内にある「MEGA WEB」の試乗用コース1・3㌔。親子ラン、3時間リレー、知的障害のある人と知的障害のない人が同じチームで走る3時間リレーユニファイドの3種目が開催された。


今年は新たな試みとして、有森裕子理事長や、サッカー元日本代表・永島昭浩さんらゲストが、抽選で当たった出場チームに飛び入り参加する企画を実施。日頃はトヨタ車が疾走している試乗コースを埋め尽くしたランナーたちが、ともに励まし合いながらゴールを目指した。

昨年に続き参加した永島さんは「ふだんは車しか走れないところを開放してもらってますから、僕にとってここは聖地みたいな感じ。名指しで声援も受けますし、感謝の気持ちを感じつつ『手は抜けないぞ』と独特の緊張感を感じながら走っていました。パラリンピックはオリンピックの開催とともに知名度は上がってきましたが、スペシャルオリンピックスの方はまだまだ世間に浸透していない。こういう機会をたくさん設けて、共に歩みながら、知名度を上げていけたらな、と思います」と今後の意気込みを語ってくれた。

ユニファイドの3時間リレーに参加した「Softbankチームパラダイス」の池田昌人さんは「アスリート(SONに参加する知的障害のある参加者)のチームメートも、思った以上に楽しんでくれていました」と満足気な笑みを浮かべた。
ソフトバンクグループはSONのパートナーであり、共催の立場として関わっており、池田さん自身も今回で4回目の参加になる。「ソフトバンクにはユーザーさんがいますので、そのユーザーさんにSONの存在を知ってもらうためにはどうしたらいいか、ということを日頃から考えて、工夫しながらやっています。今日も同じユニホームは着ずに、Softbankの名前を出さないで参加してくれている社員も、かなりいるんですよ」と社内外における地道な普及活動の現状を明かしてくれた。

ランニング仲間4人で昨年に続き参加したという「やぬうぴい」さんチームは、スヌーピーの着ぐるみを着用。「参加したのはウエブで知ったのがキッカケ。もちろん暑いですが、仮装していると、子供とか、みんなの声援がスゴイんです。一緒に走ってる人たち声を励まし合いながら頑張りました」と、汗だくでへたりこみながらも、明るく笑った。
特別協賛の立場で関わるトヨタ自動車の関係者で構成されたチームには「アフリカ」の名が冠せられていた。南アフリカ・ポートエリザベスから来日して、まだ3か月のヌワビサさんが、チームに加わっているのがその理由。当のヌワビサさんはすっかりチームに溶け込んでいる様子で「とっても暑かったけど、楽しかった」と白い歯を見せた。

ゲストで参加した芸人「マテンロウ」のコンビは、同じチームに入り第2、第3走者としてたすきをつないだ。「1.3キロは意外にきつかった。でも変化に富んで楽しいコースでした」とアントニーが振り返ると、大トニーは「みんなが楽しく走っていて、素晴らしいイベント。長く続いて欲しい」と温かい雰囲気に感銘を受けた様子。
 ピン芸人のバイク川崎バイク(BKB)は、スタート時に抽選で当たったチームと合流できないアクシデント。「誰にも選ばれてない人になってしまった」再抽選を行い、何とか走ることが出来たという。
「トヨタの〝公道”でバイクが走っていいのかと複雑な気持ちでした」と言いながらも「このような素晴らしいイベントがあるとは知らなかった。これだけ人が集まっていて、根付いていることに胸を打たれました。このイベントがもっと広がるために、微力ですけど、盛り上げるお手伝いしていきたい」と語ったあと、「無事・完走・万歳。BKBということで」と自己アピールも忘れなかった。

どりあんずの堤太輝は「応援の声がこんなにちゃんと聞こえるんだ、と走ってみて初めて分かりました。応援って大事なんですね。いい経験させていただきました」としみじみ。

相方の平井俊輔は「体重110㌔ありますからね。走り出して2歩目で足が痛くなりました」と告白。「ただ沿道の声援に励まされて、なんとか走り切ることができました。太っている人には、これを言いたい。『マラソン、楽しいよ』と。もう、これだけ。走り終わった時には、8キロくらいは行けたかなと思いましたね」と一気にまくし立てた。
すぐに「スミマセン、ウソをつきました」とこうべを垂れたが、最後には「有森さんの、すべての参加者に笑顔で接する姿は素晴らしい」と声を揃えて感動していた。

第7回を数え、ボランティアの連携もスムーズで、大会そのものも洗練されたものになりつつある。成熟度を増したこのイベントにより、スペシャルオリンピックスの知名度も確実に上がっている。その手ごたえを、誰もが実感している様子だった。

(取材・文=スポーツジャーナリスト・小川 朗)

▷ゲスト(順不同)
森 理世さん、小塚崇彦さん、平岡拓晃さん、安藤美姫さん、山本ゆうじさん、岡本篤志さん、Moning☆Diamondsさん、永島昭浩さん、木村真野さん、マテンロウさん、フルーツポンチ・亘さん、パンサー・菅さん、タケトさん、どりあんずさん、ニブンノゴ!宮地さん、バイク川崎バイクさん。