第2回全国ユニファイドサッカー大会

アスリートもパートナーも、参加選手すべての顔が、明るく、輝いていた。2017年12月(9~10日)にユニファイドスポーツの祭典のひとつ、「スペシャルオリンピックス日本 2017年第2回全国ユニファイドサッカー大会」が大阪府の堺市立サッカー・ナショナルトレーニングセンター J-GREEN堺で開催された。

集結したのは、11人制5チーム、7人制15チームの計302名。きれいに晴れ上がった冬空の下、知的障害のある人(アスリート)とない人(パートナー)のユニファイドチームが、激戦を繰り広げた。


満足気なアスリートたち

参加アスリートの誰に聞いても、ユニファイドサッカーの楽しさを口にする言葉が返ってくる。「色々な人との交流があっていいと思う」(SON大阪のTeam Yello Tiger前田有紀選手)「運動になるし、みんなと友達になれていい」(同 森佳代子選手)と、試合後の心地よい疲労の中で笑う。アルビレオ新潟サンで勝利を導くPKを決めた佐藤真大選手は、ヘッドコーチと母の賛辞に、照れたような笑みを浮かべた。「ユニファイドサッカーに参加するようになって刺激を一杯いただいて成長しています。少しずつ変わってきました」と、母、恵子さんがうれしそうに言い添えた言葉でも、ユニファイドスポーツの良さが伝わって来る。

ユニファイドスポーツならではのチーム編成

アスリートとパートナーが一体となってプレーするユニファイドスポーツ。様々な人間が入り混じって生活する日常そのもののようなチームで繰り広げられた大会では、あちこちで笑顔が弾けた。チームメイトが互いに支え合い、ゴールを狙い、守る。チーム編成も練習も、それぞれで全く違う。

7人制のアルビレオ新潟サン、アルビレオ新潟スワンは佐近慎平ヘッドコーチが新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科の准教授であることから、パートナーは同大の学生が中心だ。サッカー経験のあるものがほとんどというパートナーたちが引っ張っていく形となっている「(パートナーの)学生たちは容赦がありません。いわゆる”お膳立てパス”のようなことは全くしない。(アスリートが)悔しい思いもするでしょうが、引っ張られて行きます。フェアだし、それがスポーツのいいところ。何かあったら、チームのみんなで考え、いいプレーはその場でほめます」と、佐近ヘッドコーチ。7人制でのディビジョン1でアルビレオ新潟サンが、ディビジョン2でアルビレオ新潟スワンがそれぞれ優勝したことで、そのチームワークと強さが証明された。

一方、全く違うスタイルでチームを作り上げたのが、SON熊本のMushan-Yoka熊本だ。急造チームのためバラバラだった第一回大会の教訓から、バランスを重視。アスリートとパートナーの年齢や競技能力がほぼ同じというユニファイドスポーツのかたちを追求した。到達したのが「パートナーはサッカー未経験者、アスリートにはサッカー経験者もいるようにしました。年齢も20代後半から30代前後。そうしてチームみんなが一緒に上達して行く形」(永井崇雄ヘッドコーチ)。地元高校の女子サッカー部と練習試合をしたり、交流会を開いたりして経験を積むと同時に、ユニファイドサッカーを広める努力もした。ディビジョン3で2位になった本大会は、それを発表する最高の機会となった。

強豪韓国チームの秘密

11人制で圧倒的な強さを見せて優勝したのは、韓国チームだ。5年目のチームを率いたCHO KIHOヘッドコーチは「5年目なので、アスリートとパートナーが信頼し合い、連携がよくなってきていると思います」と、経験に裏打ちされた強さだと打ち明けた。韓国内でも、地域によってチームの特徴は異なるという。ユニファイドスポーツの広がりと可能性を感じさせる韓国チームの優勝だった。

お互いがリスペクトし合う素晴らしさ

2回目の開催となった本大会の成り立ちと今後について話すのは、筒井清二副競技委員長だ。

一般社団法人大阪府サッカー協会の障害者サッカー担当も務めている筒井氏は、ユニファイドサッカーについて「非常に面白い。アスリートとパートナーがお互い、リスペクトし合う気持ちを持って一緒にボールを追いかけている。サッカーの世界には必要なことなんです」。お互いを尊重する気持ちがより強くなるのがユニファイドスポーツの良さなのかもしれない。

「去年よりエントリー数も増えたのは喜ばしいことです」としながらも、将来に向けてのさらなる努力を促す。「視野がより広がることも必要ですね。スペシャルオリンピックス、ユニファイドスポーツの広報活動をもっとすることを勧めています。(参加者)それぞれが地域に帰って宣伝するのがいいでしょう」。筒井氏の言葉通り、ユニファイドスポーツを年々推進し、広げていくのがSONの使命となる。


ユニファイドスポーツ

知的障害のある人とない人でチームを作り、練習や試合を行い、スポーツを通じてお互いに相手の個性を理解し合い支え合う関係を築いていく取組で、スペシャルオリンピックス国際本部が推進しているプログラムの1つとして世界中で展開されています。

障害の有無を越え、スポーツを通じて喜びや悔しさ、達成感など様々な経験を共有することにより、お互いの理解を深め、友情を育むことを目指しており、社会的インクルージョンの実現を促進することを目標としています。

ディビジョニング

スペシャルオリンピックスの競技会では、可能な限り同程度の競技能力のアスリートが競技できるように、性別、年齢、競技能力などによってグループ分け(ディビジョン)を行います。このディビジョニングによって、自分の現在の能力を十分に発揮し、一番輝く機会を得られると考えています。