お知らせ

2020年~スペシャルオリンピックス活動にかかわるすべての皆さんへ 有森裕子理事長よりメッセージ~

新型コロナウイルスの感染拡大により、2月、アスリートの日頃の練習の成果の発表である
「2020年第7回スペシャルオリンピックス日本冬季ナショナルゲーム・北海道」の中止を決断をしました。

4年に1度の全国大会として、全国から約1,000名のアスリートと、延べ3,000名の皆さんが一同に集い、競技だけではなく、障害の有無を超えて相互理解をし交流をするとても大切な場がなくなってしまいました。
そして、2020年内は、スペシャルオリンピックス日本は集合型のイベントや競技会はすべて
自粛する判断をしています。
そんななかで、この新型コロナウイルスの感染拡大で、私は、改めて気づかされたことがあります。


それは、
世の中の安全や安心が保証されない限り、スポーツを楽しむことは難しいということ。
そして、知的障害者への社会の関心は、まだまだ低いということ。

さまざまなイベントやスポーツ競技会は縮小したり、なくなったりしています。
知的障害のある人にとっても、スポーツの場を失うことは実はとてもつらいことです。
日々のルーティンを保ち続けられず、目標を見失ってしまい、
そして何よりも、自らの存在をアピールする場を失ってしまうからです。

今回のようなコロナ禍や災害のときに、障害者、そして知的障害者は、社会の中で置き去りにされることが多く、その存在を忘れ去られかねないという不安を覚えます。

知的障害のある人たちも、自分の考えや思い、困っていることなどをもっと多くの人たちに知ってほしいはずですが、今の社会は、知的障害のある人たちのことを理解する機会があまりに少ないのが現状です 。

スペシャルオリンピックスは、日常のスポーツ活動を大事に続けてきました。それは1週間に一度、2時間程度のプログラムです。でも、この2時間は、アスリートがボランティアや仲間と過ごす、とても大切な居場所であり、生活の一部になっています。スポーツがもたらしてくれたこの日常を重ねていくことで、お互いの小さな変化や成長に気づいたり、一緒に喜んだり、何に困っているのか、を知ります。

いまスペシャルオリンピックス日本が力を入れて推進している、“ユニファイドスポーツ”は、
まさにこの相互理解と社会参加が大きな目的です。 
この取り組みを積極的におこなっていくことで、知的障害のある人の代弁者というよりは、日常的に、自然にお互いを理解する人を増やしていきたいと考えています。

スペシャルオリンピックスが複数形になっているのは、この名称がひとつの大きな大会をあらわしているのではなく、日常のさまざまな取り組みが継続され、小さくても、柔軟にさまざまな活動を積み重ねていくことがあらわされています。

わたしたちは、ただ、この状況を悲観するのではなく、現場や現実を前に動かしていきたい。
そして、知的障害のある人たちの状況を、自分事として考える人を増やしていきたい。
ただ、急ぐのは禁物です。
知的障害のある人たちは、新しい生活習慣を常に実践することに、世の中の当たり前と思われている“速度”にはついていけなかったり、新型コロナウイルスによる重症化のリスクが高いことの情報もあります。

まだまだ、分かり得ないこの状況のなかで、
アスリートや参加者の安心安全を一番に考えることはもちろんです。

そして、競技会やイベントや活動のかたちを、今までと同じ考え方で行うことを前提とするのではなく、かたちを変えること、止まる判断をすること、も大切だと考えています。
いまだからこそ、今までの価値観を見直すチャンスでもあります。

「Be with all」
スペシャルオリンピックス日本が今年掲げた新しいスローガンです。

わたしは、「みんなが輝き、誰ひとりも取り残されない社会」を、目指していきたい。
そして、いまだからこそ、スポーツの持つちからを信じて、
理想を思い、願い続け、皆さんと共にひとつひとつの現場を動かしていきたいと考えています。


スペシャルオリンピックス日本 理事長