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【第3回・前編】有森裕子理事長単独インタビュー「SONが社会に果たす役割とは」

スペシャルオリンピックス日本(以下、「SON」という) 有森裕子理事長の単独インタビュー、前編をお送りします。理事長のSONへの深い愛情と熱い思いを聞きました。


─ 有森さんがSONと関わられるキッカケをお聞かせください。

有森 2002年からドリームサポーターです。もう15年になるんですね。

─ 有森さんだけでなく、かなり前からサポーターをされている方もおられますよね。

有森 北澤豪さん(元サッカー日本代表)と森理世さん(2007年ミスユニバース世界大会優勝)は、長年一緒に活動してくれています。北澤さんは、2005年の長野世界大会から積極的に関わってくれていて、こういった活動に対する熱心さと、真面目さと、前向きで積極的な発想をお持ちです。非常に純粋に自然に活動するっていうスタンスが、私は大好きなんです。北澤さんと森さんは一緒にやっていて、非常に気持ちのいい二人です。

有森裕子(ありもり・ゆうこ) / スペシャルオリンピックス日本理事長

─ そういった皆さんの熱量っていうのは、どこからくるんでしょうか?

有森 もう単純にSO(スペシャルオリンピックス)に参加して、それぞれがいろいろなことを感じ、続けているんだと思います。私たちはアスリートたちに、スポーツをする場を提供して、それぞれの役割で動いているだけ。

─ サポーターの方たちは、大会などで出会ったSONのアスリートを通じて、競技に出会った頃の純粋さとか、楽しさを思い出す方が多いようですね。

有森 人それぞれに、持っている障害の度合いにも、シチュエーションにも、色々なケースがあります。現場で見て、感じて、気付く率が、圧倒的に今まで以上に高くなります。

─ 逆に言えば、現場に行ってみないと、人はなかなか、それに気付けないものですね。

有森 そういう現場にいないから、そういうことを考えないアスリートがたくさんいる。だから、もっとスポーツの現場にアスリートが増えればいいな、と思いますね。

─ ロンドンオリンピック柔道銀メダリストの平岡拓晃さんが、ヨーロッパから2チームが来日して講道館でイベントをした時に、衝撃を受けたお話をされていました。日本では健常者と知的障害者が一緒に練習することはなく、厳しい雰囲気の練習が当たり前。でもヨーロッパの2チームが来日した際に、ゲーム感覚を取り入れて、笑い声も出る楽しい練習をしていたことに感銘を受けていました。

有森 「楽しく厳しい」というのは日本では、あまり思わない。日本でやる場合、障害者と一緒だと一生懸命さを削がれるとか、レベルが違うとか。でも一生懸命は海外の選手も日本選手も違わない。一生懸命やっていれば、別にそこを分ける必要はまったくない。そこらへんは、たぶん皆さん分かってます。むしろ私たち以上に、自然に一生懸命に練習することが出来ているのに気づかされる。それに気づかされて、私たちが頑張れるようになるという、そういう気づきが生まれると思いますね。ただ、気を付けなければいけないのは、日本と単純に比較してはならないこと。スタートの時期も形も違うので「海外にあって、日本にはないよね」ということだけで、簡単に判断するのはどうかと思う。でも、一緒に練習することは良いことに違いないので、良き方向には向かっていくと思います。

─ 知的障害者に対して的確な技術指導をしていくことは、その道のプロでも難しいようにも思えるのですが。

有森 専門家になる必要はないと思うんです。基本は普通でいい。直ぐに理解する人もいるし、手をかけなくてもいい人もいる。彼らを通して、これが特別なことじゃないんだというのに行きつくと、もっともっと社会に順応するコミュニケーションの取り方も学んでいけるんじゃないかと思います。共に生きていくパートナーになること。最終的なパートナーになる道を見つけられればと思っています。社会に、どう一緒に生きていくことを見せつけられるかだと思うんです。じゃあ切り口として、どういう方法論で見せるのか、という時にスポーツの現場でそれを見せられれば、興味を引きやすい。年代関係なく、男女関係なく、国籍関係なく、世界共通で、スポーツ選手が唯一できる手段ですね。他の人にはない、手段であり方法であると思います。


インタビュア:小川朗(スポーツジャーナリスト)