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インタビュー

みんなが同じになる必要ない。いろんな個性が集まって理想のチームになる

インタビュー
山口素弘氏(名古屋グランパス アカデミーダイレクター)

日本選手団の練習を見守る名古屋グランパス アカデミーダイレクター・山口素弘氏に、ユニファイドサッカーへの思いを聞いた。


山口素弘(やまぐちもとひろ)/ 名古屋グランパス アカデミーダイレクター
1969年1月29日生。群馬県高崎市出身。ポジションはボランチ。東海大学を2度の大学日本一に導き、全日空(後の横浜フリューゲルス)に入社。Jリーグのオープニングを横浜フリューゲルスで迎え、名古屋グランパス、アルビレックス新潟、横浜FCでも活躍。1998年FIFA World Cup フランス大会でフル出場するなど、国際Aマッチ58試合出場。2007年シーズンを最後に現役引退。2012年からは横浜FCの監督を3シーズン務めた。

―山口さんは、「2018年スペシャルオリンピックス ユニファイドフットボールカップ・シカゴ presented by TOYOTA(以下、シカゴカップ)」の日本選手団のパートナークラブである名古屋グランパスのアカデミーダイレクターとして、4月に福島県内にて行われた第1回日本選手団練習にも参加されました。それから1ヶ月足らずですが、前回と比べて選手団に何か変化を感じましたか?

山口 前回は初めてというのもあって少し硬かったですね。今日久しぶりに会って、いい意味で「慣れ」が出てきたように思います。今日もはじめのうちは少し緊張気味でしたが、時間経過とともに少しずつ声も出るようになってきたと思います。この2泊3日の合宿で、もっとなじんでいくと思いますよ。いつもと違う恵まれた環境でサッカーをして、みんなで一緒にご飯を食べて、ミーティングをして……生活を一緒にすることによって、より結束力が出てくると思います。

―今回、名古屋グランパスU-18と練習試合を行いました。どういった目的があったのでしょうか?

山口 事前に聞いていたのは、まずディフェンスの強化。とくにシカゴカップの対戦相手は体が大きくフィジカルも強いですから、準備をしておきたいということでした。僕もユース(名古屋グランパスU-18)の選手たちには、遠慮しないで思いっきりやるように言っておきました。そのとおりやってくれたので、日本選手団にとってはいい練習になったと思います。

―選手団の試合を観ていて、「知的障害のあるアスリート」なのか「知的障害のないパートナー」なのかというのは、あまり意識しませんでした。そのあたりはどうお考えですか?

山口 僕も前回、福島での練習で同じように感じました。サッカーが上手な子がいて、まだ力を出し切れていない子もいる。それは、どこのチームにもよくあること。お互いがわかり合えればいいことです。練習を重ねれば、だんだんわかりあえてくると思います。

たとえば、声の出し方ひとつでも、ずっと大きな声を出し続ける子もいれば、冷静にピンポイントに言う子もいる。声を出すことで頑張れる子もいれば、逆に内に秘めて我慢強くやる子もいる。それはそれぞれ、性格の違いだと思うんです。無理やり、みんな同じになる必要もない。いろんな個性が集まって、ひとつの大きなチーム、組織になるのが理想なんです。だから、障害のありなしで分ける必要はまったくないと思います。性格と同じように、ひとりひとりの個性なんですから。

選手同士の中で、個性を求め合えるようになって、補い合えるようになっていけば、もっといい形になっていくと思います。

―最後、3本目の20分は、日本選手団と名古屋グランパスU-18をミックスして、混成チームでの試合。名古屋グランパスU-18のみなさんが明るい声で盛り上げていたのが印象的でした。

山口 そうでしたね。彼らもそういうノリが大好き。グランパスは以前から社会貢献活動に力を入れていますが、ユースチームもただプロになる選手を育てるというだけでなく、人として人間性を高めることにも力を入れています。社会に出たときに大事なことを身につけないといけない。逆に、そういうものを身につけないとプロにはなれないということでもあるんです。

そのためにも、こういった取り組みに積極的に参加するのは大事なこと。逆にユニファイドチームのアスリートやパートナーの姿勢から得るものは大きいと思っていましたし、実際に選手たちのあの姿を見て、お互いにとって本当に良かったと思いました。

実は彼らには、事前にバスケットボール・ユニファイドチームの動画を見せていたんですよ。その時点からすでにユースの選手たちも感じるものがあったようです。それと、先日福島に行ったときに聞いていた選手団のスローガン、『笑顔と感謝』も伝えました。それもユースの選手たちには響いたのだと思います。

見てもらったように、彼らはこういう素晴らしい、恵まれた環境でサッカーをやっているのですが、ずっとやっているうちに、それが当たり前みたいな感覚に陥ってしまうんですね。でもそうじゃない。こういう場所を提供してくれるクラブがあって、そのクラブを応援してくれるトヨタという企業があって、ずっと応援してくれる親がいて、今までサッカーを教えてくれた指導者がいて……。みんなに感謝をしないといけないんです。

ただ、僕らがいくら言葉で「感謝しなさい」と言ったところで、なかなか伝わるものではないんですよね。ところが、こうしてユニファイドのチームと一緒にプレーすれば、自分で感じて、自分で考えることができます。言葉はいらない。だから、ユースチームの選手たちにとっても、得たものは大きかったと思うんです。

――グランパスは、以前から社会貢献活動に取り組んでいるのでしょうか?

山口 社会貢献はJリーグの理念でもあり、どのチームも非常に熱心です。それとU-18の古賀聡監督や竹谷昂祐コーチは、今年1月にグランパスに来るまで早稲田大学蹴球部で指導していて、そこでさまざまな活動に取り組んでいたんですね。ブラインドサッカーもそのひとつ。僕も経験してみて、難しさがよくわかりました。ユースの選手たちにも、いろんな視点からサッカーを見られるようになってほしいと、監督・コーチとはよく話をしています。

―指導者として、ユニファイドサッカーの指導について何か思うところはありますか?

山口 実際にユニファイドのチームを率いたわけではないので何とも言えないのですが、日本選手団スタッフのみなさんの取り組みを見ていると頭の下がる思いです。障害があるということで変に気をつかうのではなく、選手という同じ立場で接しています。その選手の良さがなんなのかに着目して、それを組み合わせていく。つまり、「普通」の指導を「当たり前」にやっています。

しかも技術的なことだけでなく、サッカーを通してお互いに伝えるもの、伝わってくるものをどうやってうまくミックスして表現するか、チームという形にしていくかという難しい課題にも取り組んでいます。とても奧が深いですね。ユニファイドのチームの指導を経験すると、指導者としての引き出しが増えるような気がします。

僕もこういう機会を与えていただいて、もっと活動の場を広げていきたいと思っています。今回はU-18のチームでしたが、グランパスには中学生や小学生のチームもありますから、いろんな世代で交流したいですね。シカゴカップの後、9月には「スペシャルオリンピックス2018愛知」がありますから、それに向けて活動できたらと思っています。

―シカゴカップ に向けて、日本選手団の課題は? どんな期待を持っていますか?

山口 今日のユースチームとの練習試合は20分ハーフでしたが、シカゴでの試合は30分ハーフになります。その時間の中でいかに自分たちの力を100%出し切るか。それには慣れも必要だと思います。

相手の実力が上だったので練習の強度は高かったと思います。最初の20分は置いていかれる場面も目立ちましたが、後半の20分はだいぶしつこくディフェンスできるようになっていました。ああいうのがどんどん出てくるようになればいいですね。

あとは「1対1で勝つ、負けない」そういう姿勢、気持ちというのが非常に大事です。それはサッカーの基本でもあるので、この合宿中に大切さに気づいて、常に心がけてほしいことです。
シカゴの本番では、まずはひとりひとりが強い思いを持ってやってほしいですね。きっとそれが見ている人たちに伝わると思います。そして、日本選手団のスローガン『笑顔と感謝』で、力を出し切ってくれることを期待しています。

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